「クレイジークルーズ」のタイトルの通り、エンタメに全フリした狂気狂乱ドタバタ劇かと思っていたのと、坂元さんの機知に富みながらも沁みる会話劇がどんな化学反応を生むんだろう？そんな期待があり鑑賞。
ところどころで顔を覗かせる坂元節はしっかり沁みる。メタなワードや影のキスシーンもとっても印象的でした。でも、「主役もエキストラも無い」にというテイストと、豪華絢爛なクルーズでのエンタメキャラとのマッチアップがどこかチグハグな感じが拭えないのはどうしてなんだろう。
これまでのドラマ脚本の重厚さと丁寧な描写、リアルとエンタメの絶妙なバランス感に慣れすぎていたせいなのか。物足りなさを感じてしまったのも事実……。今回はリアルとエンタメ演出とのバランスが完全にエンタメ寄りだったので、であるならストーリ構成の抑揚をゴリゴリに付けるか、メインキャスティングをも少し斜めなキャスティングにするとか、犯人や主人公かどこかの人物描写をもっと掘り下げるべきだったのか…。難しいなって思います。
「エキストラで普通な2人の恋・サスペンス」をメインを張れるキャストさんらと前面に出して映画でやるなら、それなりにテーマ性や構成、演出を掘り下げたり、捻くれたシュールさだったり。何かしかの装置が必要だったようにも感じてしまいました…。エキストラや主役というワード演出等、観客に迎合しすぎて、逆に弱者というレッテルを際立たせ煽ってないかとさえ感じる。今作は、これまでの上等な脚本や演出に肥えた観客の期待値とのズレがあったのかも知れません。
監督さんもSPECやケイゾクの堤監督に師事していたなら、ああいったシュールさをもっと出しても良かったんじゃないか…？折角すごい人たち集めてるのに勿体無い。
好き勝手言ってますが、自分で作るんだとしたら本当に難儀だなって思います。次回作もしっかり観ますので影ながら応援しております。
