りょー

ある男のりょーのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.4
平野啓一郎さんの分人主義という考え方に共感するところがあり、やはり『ある男』でも通底する主張を感じました。

安藤サクラさんの「真実なんて知らなくて良かった」というセリフに、胸が軽くなる人もいるんじゃないでしょうか。

あの日あの時あの場所であの人と過ごした自分。今日、この人と過ごしている自分。

国籍、血筋、家柄、社会的地位、性別、年齢、容姿、性格、仕事、趣味嗜好。

どの瞬間の自分も、紛れもなく自分のパーソナリティだし、分断して考えても良い。

多面的な捉え方は、気持ちの整頓として、納得がいきます。

平野さんの小説の根底には、その分人主義が、建設的で文化的な会話から、重層的に、そしてポジティブに結びついていくので、その温かさとリズム感が好きです。

なので、映画は映画である程度別モノとしてみてます。あのカットを着地点に持って来るのは、評価が別れそうですね。

『本心』も楽しみです。
りょー

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