みむさん

Pink Moon(原題)のみむさんのレビュー・感想・評価

Pink Moon(原題)(2022年製作の映画)
4.0
トライベッカ映画祭にて。

これはとてもしんどい映画だった。ネタとしてはこれまでも散々描かれきたものだけども。
父の74歳の誕生日を祝う家族。次の75歳の誕生日をもって人生を終えたいと父から突然の衝撃告白。
健康で経済的にも不自由なく妻は亡くしているが愛する娘息子がいて孫もいる。幸せな人生なのになぜ…と娘アイリスと息子イワンは当然理解できず動揺。

安楽死の選択。自分の人生は自分で管理したい、終わり方も自分で決めたい、子供にも迷惑をかけたくないという気持ちはわかるけど。
今まで自分が観た映画では病気や痴呆や身体機能不全などになってから迷惑をかけたくない、苦しみたくないがために…という状況で決断に至る話はよく描かれていたが、このお父さんはまったくもってそんなことなく。医者にかかったり迷惑をかけたりする前に早めに終えたい、もう人生でやることは終えたと数年前から考えていたと。

子供との交流や孫の成長を見ることを今後一切捨ててしまうって!?

お父さんの意志が強固なので理解できない娘とは平行線のまま。息子は渋々受け入れようとする。

一体どうするのこれ?

この話をするとモメるのでその話題を避けてる姿はまた見ていてつらい。
着々と身の回りを整理し準備を進める父と家も思い出の品も手放したくない娘、そうこうしているうちに父の誕生日パーティの日は近づきタイムリミットが迫る。

なんとか父が考えを変えてくれないかと最後まで粘るのもわかりすぎる。
でも、父の思いも尊重しなきゃならない。

これは娘アイリス目線で描かれているし、私も「なにも今じゃなくても…」という思いが消えず、ずーっとしんどかった。

お父さん的には妻も先立ったし、やることはやったし悔いもない、そんな感じだけどさ……

議論するにも唐突すぎて、理解できないけど理解せざるを得ないというか、そこまで意志が固いなら尊重するしかないと無理矢理アイリスとイワンの中で折り合いをつけなければならないのが本当にツラくて。

一応それなりに(一年)猶予はあったが、もっと時間があればもう少し心の準備と余裕ができたのかもしれないけど。

父側からすると潔く人生から退く話で安楽死の選択の自由の話なんだけど、娘側からするとまるで限りなく自殺に近い死の選択を尊重できるか?という感じだったな。

※オランダは安楽死は容認されているらしいが、この場合(お父さんが超健康だが生きるつもりはなく死を望む)は、安楽でない者(一般的には終末期患者など)を安楽にするという安楽死の解釈に「体は完全に健康だが生きずに命を終わらせたい者=安楽ではない者」という解釈が含まれるのか?という疑問は湧いた。
劇中でも娘が「それ違法じゃね?」って真っ先に言ってた気持ちはものすごくわかる。混乱しちゃうよね。

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