小西

エゴイストの小西のネタバレレビュー・内容・結末

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

鈴木亮平演じる浩輔から父性と母性の両方を全力で感じたのだけれど、この映画のタイトル”エゴイスト”とはどういうことなんだろう。浩輔が出逢った母子にほどこした行為は、ただの自己満足だったのか?エゴだったのか?

どんどん口座からお金が引かれていく描写がチラリと映って現実に引き戻される感覚を覚えた。エゴと愛の狭間で感情が揺れ動く感じ。お金では買えないものを受け取っているんだけど、残酷なまでに現実が押し寄せてくる様子にヒリヒリした。

神様はいつも人間の覚悟を試すよなぁと現実社会を生きていて思うことがある。お金で解決出来るなら、その方が楽だと感じることがある。だから浩輔のしている行為が、偽善のようにも映る瞬間があった。でも最後に、自分のなしうる全てを差し出して、全身全霊で愛してるからこその行為であることを証明しているような描写がありとてもそれが素晴らしいもののように思えた。

トランスジェンダーとしての苦悩は、阿川佐和子の一言で救われたと思った。”男でも女でも、大事な人が出来たのが1番”その一言に浩輔と龍太はどれだけ救われたんだろうと想像した。観ている私まで救われた気持ちになった。その一言で救われる人がこの世界にどれだけいるだろう。

私がそれを愛と名づけたらそれは愛なの。

[追記]
小説を取り寄せて読みました。
素晴らしい作品でした。
内側の葛藤や自問自答するくだりが非常にリアルでした。高山真さんがすでに亡くなっていること、そしてこの物語が自伝的小説であることを加味して映画を観ると少し見方が変わるかも知れません。

映画はかなり性描写が激しいので💦自らのセクシャリティーに不安を抱える少年少女は、是非この小説を読んでいただきたい。何もかもに絶望して自殺を試みようと思っていた主人公が、愛する人と出会い、まとっていた鎧も全て脱ぎ捨てて全力で自らの運命を受け入れる姿にすごく勇気がもらえます。親にも少し優しくなれると思います。

高山真さんにこの映画観て欲しかったなぁって本当に思う。全身全霊で演じた鈴木亮平をスクリーンでみて欲しかったなぁ。
小西

小西