小西

夜明けのすべての小西のネタバレレビュー・内容・結末

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

PMSの女性とパニック障害もちの男性。と周りにいる人間模様のお話。

[好きなシーン]
「土日しっかり休んじゃうと月曜どっと疲れる」→「確かに…」→「でもそれって誰でもかぁ…」その後、バザーってポテト食べるとこも何かよかった。
いろんな体質の人がいて、社会が求める型にはまることが出来ない人もいる。社会の中で上手くやっている仮面をかぶっていても、何かのトリガーで深淵を覗き込んでしまう時がある。きっとみんな騙し騙し、月曜日を迎えてる。5年かかる人もいれば、10年かかる人もいる。パニック障害にならなければ、ブレーキがない車みたいにそのまま突っ走って死んでたのかもしれない。渋川清彦の涙ってそういうことだったのかなと思った。居場所ができてよかったみたいな、涙。息子のハンカチもなんかよかった。

そしてやっぱりプラネタリウムからエンドロールのシーンがすごくよかった。コンビニ行くのに何か買って来ましょうかってとこ。居る環境って大事。生きてれば変われる。そんなことをぼんやり思わせてくれる映画だった。

[原作も読んでみた]
少しずつ設定は違う点があるものの、よくこの物語を映像に昇華したなぁとつくづく思った。原作も映画も両方が良いってなかなかない。

原作では山添の変化がもっと色濃く描かれていた印象。藤沢さんに髪を切られて、笑い転げるシーン。「2年ぶりに笑うことができた」と記述がある。パニック障害になって2年、原作ではその病の苦しみや孤独感がより深刻なものだということがわかる。藤沢さんの人並外れたお節介に、触発されて変わっていく山添を心の底から応援したくなった。

山添の元上司からの手紙とかも、本当にグッときた。私の知っている社会や会社は、こんなに親切でも親身でもない。社会についていけない役立たずは切り捨てられ、使い捨てられ。そんな環境に自分もいつのまにか回復出来ないほどすり減り、腹の中に攻撃性を孕んでいる。こんな生ぬるい世界はどこにもない…。
小西

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