シミステツ

エゴイストのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

首の使い方が上手だなと最初のシーンですぐ感じた。変に脚色しようというのではなく、あくまで自然に所作を磨く感じ。

服は纏うもの、みずからを守ってくれるもの。
どこかで自分を騙し騙し、虚勢を張らなきゃいけないところもあるんだろう。

パーソナルトレーナーとして働く龍太との出会い。母のために献身的な姿を見て、龍太のために尽くす、与える浩輔。

身体を重ね愛し合うふたり。
ネコとタチのイメージと違うのがいいね。

「終わりにしたいんです」

突然の告白。
ウリで生活している惨めさや後ろめたさ。与え続けてきた浩輔が重荷になる。

「僕が買ってあげる」

そうしてまた愛し合う時間を共有していく。

浩輔がお母さんにお金を渡すシーン。
どこかで亡き母親を想う気持ちもあったんだろう。

性的マイノリティの恋愛の話だと思ってたけど、それ以上に深い、家族の愛の話だった。結婚ができない、子どもも産めない、となった時に愛の行方は自分を産んでくれた、つなげてくれた母親の存在にも。「何もできなかった」という想いは、何かをしてあげないといつか後悔してしまう、失ってしまうという感覚にも近いんだと思う。好きな人。その好きな人を形成してくれる人も大切にすべきで、与えることは時に傲慢でもあり、でもそれは紛れもない愛、自己犠牲の奉仕の形であり、それでしか自らを表現できない、そんな人もいるんだと思う。これは善悪で語られるべきではないことで、そこに確かに愛はある。与えることで、与えられている、という側面も確かにあるはずで、フラットに言うならWin-Winなところもある、それはただ帰結であり、入口ではない。愛はエゴでもある。エゴが愛を形作る。

「ぼくは、愛がなんなのかよく分かんないです」
「あなたが分かんなくてもいいの。私たちが愛だと思ってるんだから、それでいいんじゃない?大丈夫、大丈夫」