この読みづらい名前の監督とバズ・プーンピリヤ監督のタイ映画が好きなのだけど、あまり見る機会がない。映画紹介のpodcastでNetflixにあるのを知って。
青年カオが、スポーツスタッキングという聞き慣れない机上スポーツで成り上がっていく話。なのだが、老若男女を問わない競技とはいえ、ライバルも弟子(教室の生徒)も子供ばかり。「スポーツ映画なのにスポーツシーンが少ない」と自虐したり、アメリカに発つ幕切れに「続編では全編スタッキングシーンにする」と観客に宣言したりのコメディで、失恋物語が本筋。
内助の功に疑問を覚えた恋人ジェイが去り、葛藤の末に関係を修復するけれど、よりが戻ることはないという哀しい話。その話が、「パラサイト半地下の家族」や「ジョン・ウィック」やの映画引用ギャグ(そもそも原題「FAST & FEEL LOVE」が「ワイルド・スピード」シリーズのもじりだ)をはじめくすぐりにまぶされて、展開していく。
それがなんとも洒落ている。
断捨離から過去の人間関係を省みる「ハッピー・オールド・イヤー」も洒脱な映画だったけれど、現実のタイは軍事独裁政権下であり、経済格差が厳しく、反体制デモが加熱している。映画の世界にいるようなタイ人は、ごく少数の富裕層なのだろう。
と、思えばなんとも切ない。
冒頭、高校生の進路面談シーンで、「マリファナを売りたい」とか「世界旅行をしたい」とか生徒たちはでたらめな志望しか言わない。他に言い様がないのかもしれない。