ベルベー

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)のベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

なんか久しぶりに「ドラえもん」をちゃんと観た気がしてなんでだろーと思ったんですけど、前作が名作リメイクな上に公開延期でロシアウクライナとバッティングという超イレギュラー案件で、ドラ泣き2は論外でその前の「新恐竜」も公開延期で夏だったし、なんかコロナ真っ只中で素直に楽しめなかったんですよね。話も内容も…って感じで。

そんなこんなで、普通に春休みシーズンに「ドラえもん」を観る。この普通が既にちょっと嬉しい。しかも今回のお話、かなり出来が良い。子供がこういうの観て情操教育されるなら嬉しいことだなと思います。

表面をなぞるだけでも楽しい冒険譚になっているし、その裏に込められたメッセージも良い。別に今の子供達が真剣に考える問題ではないかもしれないけど、彼らが成長した時、本作の鑑賞経験は良い方向に働くのではないでしょうか。世の中、他人を騙して蹴落とす悪い奴等ばかりなので。そんな最低な社会と立ち向かう希望の道標になるはずです。

子供だけでなく大人も。最近、自分らしく生きれてますか?流されるままになっていませんか?振り返るきっかけになれば良いのではないでしょうか。本作の悪役みたいな汚れきった大人は観ても検討を加速させるか重く受け止めるくらいしかできないだろうから観なくていいよ。これからを生きる人にオススメ。

といっても別に話として真新しいわけではなく、よくあるディストピアもの、色々な物語から展開を拝借してるんですがそれを「ドラえもん」に落とし込む手腕が良いよね。のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫、そしてドラえもんというキャラクター自身が持つ良さに上手く繋げている。ついでに本作オリジナルキャラクター、ソーニャの造形も良い。永瀬廉の声も◎。元ネタを探してみるのも一興かと。でも空中に透明な何かを見つけるシーンで「NOPEだー!」と思ったり、パラダピアがホルガ村に見えたりしたら反省だよ!

あと、悪役はおふざけ一切なしでシリアスに徹しているのも良かったな。映画の「ドラえもん」って悪役がやたら怖いから、子供心に残る。最近だと「新・日本誕生」の大塚芳忠しかり「月面探査記」の吉田鋼太郎しかり。

今回、園崎未恵も石井康嗣も村瀬歩も怖いんですが、黒幕の某声優がそりゃあもう圧巻の演技で、やってることは最悪だけどコイツ自身も可哀想なのか…じゃあどうすれば良かったんだろう…と考えるきっかけになるような名演技だったので本当教育に向いている。そういえば25年前にこの声優さんが某劇場版でやった悪役も、哀しい過去があってそれはそれとしてこの行いは…って役だったので、当時子供だった私の道徳心を養ってくれたと思います。

個人的に残念だったのは凄くスッキリ終わってしまったこと。いや、スッキリって良いことなんだけど…モヤモヤが残るからこそトラウマ的に記憶に残り、情緒が養われることってあると思うので。井上敏樹や小林靖子、何よりまだF先生が存命だった頃に幼少期を迎え育った世代としては。まあ、好みの問題かもしれません。

あと服部隆之の音楽がいつもとちょっと雰囲気変えてたのが印象的だった。いやしかし久しぶりに良い「ドラえもん」でした。満足。
ベルベー

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