現実においても創作物においても、いばらの道を同行しようと誘ってくれる者ほど途中で勝手に楽になってしまい、誘われた側が謎に置いていかれるという一定のパターンがある気がする。
そうしたことがあっても、捻くれたり拗れたりしないのが本作の主人公の強みではあるが、これらを許容できなくてもなにも不思議ではないとも思う。
主人公はくたびれているが擦れてはおらず、素直に淡々と対応していく。それができない人間もきっと多いが、世に要素が溢れすぎていていちいち対峙するのも億劫になると「こなす」しかなくなってくるというのもある気がする。
解決はしないが、少し息がしやすくなるようなラストが爽やかでよい。