自分の意見をきちんと伝えられる姿に憧れると佳純は言うけれど、彼女の強さは「自分自身を偽らないこと」だと思った。
三十路あるあるの詰め合わせだと思っていたら大間違いで、自分の心を大切にして生きていくことがすごく繊細に描かれている。
鬱病を患っている救命士の父親、旦那の浮気を疑う妊婦の妹、娘の代わりに婚活に励む母親、どんな時でも笑うことを忘れないバツ3の祖母、と佳純を取り囲む環境はあまりにも目まぐるしくて騒々しい。
それでいてチェロの道を挫折したことも少なからず彼女の性格に影響を与えているだろうし、他者から向けられた好意に向き合えないには何かしらの理由があるはず、と興味深く主人公を観察していた。
そんな中ずっと感じていたのは、もう誰も彼女に期待させないで・裏切らないで、のふたつ。だけれど、不思議と佳純の周りには人が寄り付いてくる、まるで頬に集まるそばかすのように。(タイトル考察しっかりしたい)
彼女が時間と空間を許容し、自分のテリトリーに受け入れた人たちとボタンのかけ違いで疎遠になる度に、孤独の愛し方とは何なのだろうかと思う。
寂しくない、不幸じゃない、でもコンプレックスがあるからこそ、他人の恋愛や性的興味に対して必要以上に過敏になり跳ね除けてしまう。
親友までをも「結婚」に奪われると、やっぱり自分が異常なのでは?と思わざるを得ない。
でも絶対に佳純は佳純を騙さないし、折れないし、屈しない。
本当に気持ちの良い孤独との付き合い方って何なんだろう。
彼女が最後に見つけた希望は、「どこかで僕と同じような人が生きてるんだと思えた」と投げかけられた一言。
逃げていくトム・クルーズは共感を持てて好きだと言った佳純は、最後太陽に向かい走っていく。人生のフェーズが変わっていくのを感じる疾走だった。