たむ

シャークストームのたむのレビュー・感想・評価

シャークストーム(2021年製作の映画)
2.6
8月も終わってしまいましたが、まだまだサメ映画です。
あの『シャークネード』の脚本家たちが再びタッグを組んだアサイラム作品です。
この邦題は完全にミスリードで、ふだん私が観ているサメ映画の中では非常にまともな方のサメ映画です。
製作が2021年ということで、比較的新しい作品でもあり、コロナ禍のサメ映画について考えてみたいと思います。

本作は、海の見える別荘に夏のバカンスを楽しみにきた一家が、嵐が直撃しサメに襲われる映画です。
『クロール』とそっくりな筋で、嵐が直撃するため、他の観光客もほぼいないというおバカなパリピの若者が、パーティ中にサメに食い散らかされていく映画ではないのです。
ほぼ一家しか出てきません。
本作のアイディアは、コロナ禍のロックダウン中に「外のコロナも怖いけど、家の中にサメが来たら怖いんじゃね?」ではないかと思われます。
嵐もコロナの象徴でしょう。
嵐によって、サメがどんどん家の中に入ってくる、襲ってくるわけですが、これもウイルスの侵入を許した場合の怖さでしょう、多分。
一家の絆を描き出すのもまさに時代に合わせたもので、弟が外で彼女といちゃつくシーンはありますが、それ以外はびっくりするほど硬派です。
弟と彼女も純愛系です。
密にならずにサメ映画を撮るには、最小限のキャストとシチュエーションが必須なのは『海上48hours』でも用いられました。

本作もその設定に則っているのですが、監督がまずかった。
『赤ずきんVS狼』の監督というあたりで不安はありましたが…。
暗闇は多い、サメの襲い方が地味、カット割すぎ、海と家の距離感もわかり辛い…と言いながら、硬派なシナリオのため、奇抜さは抑えている演出ではあります。
大波によって、サメが入ってくるような家に住むことはなかなかないシチュエーションではありますが、家族をテーマにウェルメイドに作り上げるマトモさは、逆に本作に希少価値をもたらす印象すらあります。

コロナによって、映画業界も変わってきましたし、まさかアサイラムが比較的まともなサメ映画を作る時がやってくるとは。
コロナがおさまれば、きっとまたパーティに集まった若者を食い散らかす密な馬鹿騒ぎ映画も帰ってくるでしょう。
バカンスという時期の設定をキープしつつも、密を回避するために家族愛映画としてのサメ映画。
サメも密を回避するため、1匹しか出ませんでしたしね。
たむ

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