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皇帝円舞曲のメルのレビュー・感想・評価

皇帝円舞曲(1948年製作の映画)
3.7
ビリー・ワイルダーの初期監督作品。
彼が師匠と仰ぐエルンスト・ルビッチの下で仕事をしていた頃の仲間チャールズ・ブランケットも脚本に参加。

20世紀初頭のオーストリア=ハンガリー帝国(今のオーストリア)、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の時代。

実はビリー・ワイルダーは1906年オーストリア=ハンガリー帝国の生まれで、正にフランツ・ヨーゼフ1世が皇帝だったその時代に生を受けていた。
自分の生まれた故郷とその時代に思いを馳せて製作したのかも知れない。
フランツ・ヨーゼフ1世は国民からとても愛された皇帝で、この作品の中でも思いやりのあるキャラクターで描かれている。

ビング・クロスビー扮するアメリカ人のスミスが、犬を連れて蓄音機のセールスにやって来た。そして宮廷貴族のジョアンナの愛犬とのトラブルから2人の恋に発展し…という軽いストーリー。

前半は愛犬たちがメインで心に響く所が少ないのだけど、皇帝が宮廷貴族として生きて来たジョアンナの幸せを考えて、スミスに身を引くように説得する辺りから面白くなる。

そして皇帝との約束通りスミスは蓄音機を買ってもらう代わりにジョアンナの前から姿を消してしまったのだ。

「自由と平等」が旗印の典型的アメリカ人スミスが「身分違い」をどう理解するか…。
皇室を持つ国と持たない国、両方の世界を知っているビリー・ワイルダーが描き出すという所が面白い。

作中で流れるオーストリア=ハンガリー帝国の国歌が、F1でシューマッハが優勝した時に流れるドイツの国歌と同じメロディーだった事に驚いた!
原曲は作曲家のハイドンが神聖ローマ帝国に捧げた「皇帝」の第2楽章の主題で、勿論オーストリア=ハンガリー帝国の方が先。(笑)
映画は歴史の授業よりずっと興味深い。
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