何かと忙しかった日々が過ぎ、やっと1人で映画を観る時間が出来ようやく鑑賞。
始まりから即没入、緊張感途切れる事なくラストまでどっぷり。素晴らしい作品だった。
特にオッペンハイマーの心理状態や彼の脳内に見えているだろう映像を感情的かつ扇情的な音響で映したりする表現方法は好きだ。
軍や政治家は科学者を武器製造者としてしか見ておらず、アメリカの力を誇示する事ばかりに囚われ、科学者たちが危惧する人類の存亡についての危険な予想図を心底想像出来ていない。
オッペンハイマーは女関係にルーズであったり、相手構わずものを言って、それによって後々痛い目に遭ったりする訳だけど、極めて私達と共通する所が多い人間として描かれていたと思う。
だからこそ、その後の彼の苦悩が私たちにも伝わってくる。
そして彼が予想した様に核兵器で脅し合う世界で私たちは今現在を生きてるという訳だ。
吊し上げの様な聴聞会で「真実を話す者はいないのか」とのオッペンハイマーの呟きに呼応するかの様に、後々のストローズの公聴会で真実を語る者が現れたのはこの物語の大きなポイントでした。
ジョン・F・ケネディの名前が出てきた時は感動。
3回しか登場しなかったアインシュタインだけど、光と影を経験した天才科学者2人の会話には重みがあって人間の2面性という意味でも物語に深みを与えていたと思う。
ノーラン監督作では「インセプション」が1番好きだったけど、それ以上に共感出来る内容の濃い作品に巡り会えました。
ただ一点、脇役に有名俳優が出過ぎなのはやや残念。
顔のアップで終わる作品は今年二つ目。「PERFECT DAYS」の役所広司とは又違う、痩せこけたキリアンの瞳が何かを語っている印象的なエンディングでした。
