舞台は2000年代のロシア。
インフルエンザに罹った主人公ペトロフの、夢か現実か区別のつかない脳内の映像と妻ペトロワの視点、加えて主人公の幼少期の記憶が入り乱れて混沌としたストーリーが延々と続く。
原作はロシアでベストセラーになった小説らしい。
古典的なロシア映画とも擬似ハリウッドの様な現代作品とも大分違って、市井のロシア市民の生活が垣間見られる。
決して暮らし易いとは言えない環境、貧困と閉塞的な社会を描き、多分現代ロシア社会を批判しているのだろう。
スタートから銃による集団殺人や妻の妄想(?)の中にある強烈な暴力性は何を意味するのか。
現状を破壊したい!という欲求の現れか。
過去と現代を行き来する中で、ソ連時代は主人公が幼い為ほのぼのと描かれているのが印象に残る。
あの美しい雪娘は多分後のバスの車掌。
時代が進んだからと言って人々の生活が上昇していない事の象徴だろうか。
バスで始まりバスで終わることの意味はその辺にあるのかも。
妻が我が子を包丁で…アレだけは衝撃過ぎたが、妻役のチュルパン・ハマートヴァは魅力的でした。
この監督のバックグラウンドも一つの大きな物語。
10年以上前だけどサンクトペテルブルクを観光した時、日本に留学していたというガイドのエカテリーナさんが「ロシアは張りぼて感がすごいでしょ?」と小さい声で言ったのを今でも覚えている。