ピロシキ

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4.2
えーー 面白い。それぞれの行動に善し悪しをハッキリつけず、なんというか、誰に自分を「寄せる」かによって見方が変わってくるような脚本がすごい。

妹による兄ちゃん姉ちゃん自立計画は大成功、家族はめでたく仲直り、やっぱり都会でバリバリ働いてるだけあるよね〜!で終わる映画なら凡庸。しかしこの物語は、そんなに単純にはいかない現実をしっかりと捉えている。自分が見ている世界よりも、見ていない(あるいは見えていない)世界のほうがもちろんはるかに大きいわけで、それを「見ようとするかどうか」によって対人関係は大きく変わっていくのだろう。主人公は兄や姉に自らの考えを押し付けながら盲目的に突き進み、そしてつまずくのである。

台詞の一つ一つも洗練されているが、たとえば戸を閉めて自分の部屋へ戻っていく兄と、戸を開け放したまま家の外へ出ていく妹の対比のように、言葉以外のさりげない動作や表情もまたとても雄弁である。だからこそ、82分という短い上映時間にも何ら物足りなさを感じない。
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