Kuuta

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのKuutaのレビュー・感想・評価

3.9
2023年ベストを決めるには見逃し作品を拾うのにあと1週間はかかりそうですが、とりあえず映画納め。今年はこれだなぁと思っていました。

ニューヨークタイムズが2017年にワインスタイン告発の記事を書くまでの調査報道もの。

電話、zoom、対面。明るいカフェでのインタビュー、いきなりの自宅訪問、人目の少ない夜のレストラン。広々とした新聞社のオフィスと密室のホテルの対比。コミュケーションを使い分け、会話の積み重ねで事件の核心に迫る編集は「大統領の陰謀」以来の伝統をきっちりと踏襲している。証言を集め、キーパーソンを探し、物証を手に入れ、裏を取る。この繰り返し。

被害者には女優だけでなく、ミラマックスの新入社員ら一般人も多く含まれ、彼らが沈黙したまま映画界を離れ、別の人生を送らざるを得なかったこと、誰にも言えない傷を抱え、今もそれぞれの人生を歩んでいる点を強調しているように感じた。「仕事のために寝たんだろ」という中傷がいかに的外れか、この映画を見るとよくわかる。

匿名か実名か、性被害の報道では特にデリケートな部分だが、ある女性が実名を名乗ると決めた電話の場面で涙。直前に短いランニングシーンを挟む、溜めの見せ方が上手い。忌まわしいある廊下のショットが、終盤別の意味を込めて再提示される。仕事の積み重ねが結実するラスト、あの間、あの切れ味は歴代のジャーナリズム映画でもトップクラスだ。
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