Ren

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのRenのレビュー・感想・評価

4.0
素晴らしかった。タイムループもののジャンルへの敬意と、でも流石に供給過多だよねーという現状への理解、双方を持っている人たちで作られたのだということがひしひし伝わってきて最高!口コミが広まって話題になるのはまず間違いないでしょう。

タイムループ設定が、「会社」「仕事」「人生」に活用されていく。『ハッピー・デス・デイ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』もエンタメとして最高だったけど、人類のほとんどが殺人鬼に狙われるビッチ大学生でも激ヤバ決死ミッションに参加させられる軍人でもないわけで、上司とクライアントの間で奔走する社会人にフォーカスを当てたのが2022年のタイムループものとして正解。

ループに気づいた平社員が部長に知らせるために、上申制度で社員全員に広めていく前半のシークエンスは単純にコントとして、いわゆる「何も考えずに楽しめ」ますが、ある展開でまず一回目のギアチェンジ(微ネタバレ有りで詳細記載)。
そこからさらにもう一段トーンが変わり、自分の夢を追及するために、まずは今自分を支えてくれている人間と目の前のタスクに全力で向き合えというメッセージに収束していく。何かとおざなりにされがちな、社会人(人間)として大前提の大切なこと。面白ジャンル映画かと思ったら、ハイパー面白自己啓発映画だった、というオチ。会社を舞台にしたSFではなく、SFを利用したお仕事映画。

ギャグは全部無難に面白い!ほぼ満席のシネクイントで爆笑が何度も起こっており、劇場体験としても盛り上がった。ただヘンなことをするとかではなく、「ループに気づいている人と気づいていない人」「部下/上司の関係性・会社の特性」が下地にある必然的なギャップギャグが殆どなので、ノンストレスに笑えたのも嬉しいポイント。

さらに特筆すべきはlyrical school。自分自身このグループを無茶苦茶好きで(メンバーが5人中4人脱退したので、その前にライブに行かなかったことは一生後悔してる)、ここまでフィーチャーしてくれたのが嬉しかったのがまず一つ。
加えて、映画との相性が良いのが一つ。元メンバーのyuuは映画好きだし、「映画」がキーワードになっている曲も多い。特に劇中でも良いところでかかった『LAST DANCE』はMVが全編名作映画のオマージュで構成された大名曲。過去の傑作タイムループものを下地にした今作との親和性も高い。

製作を担当したCHOCOLATE Inc.は元々名前だけは知っていて、元Awesome City Clubのマツザカタクミやパオパオチャンネルのぶんけいのいるユニークな広告会社という認識だったので、今作の仕事のディテールはかなり自社の社風を反映させているのではと邪推してしまう。
竹林亮監督、『14歳の栞』が大傑作すぎたので勝手にドキュメンタリー監督だと思っていたらこういうのも撮れるんだ!という嬉しい驚きもあった。もっとCHOCOLATE企画・製作の映画観たい!

『lyrical school「LAST DANCE」』
https://youtu.be/O6SF_EonX9I



《⚠️以下、微ネタバレ?⚠️》



勝手に背景だと思っていた要素が、当然ながら背景ではなかった、という展開。始めに一つの社会構造を提示されると、そこに描かれない人間は「いない」と錯覚してしまう、我々が肩書きに抱く偏見を突かれる。『パラサイト 半地下の家族』かと思った。
Ren

Ren