染夫木智也

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないの染夫木智也のレビュー・感想・評価

5.0
タイトルからは想像できない完成度、今までに無い日本だからこその新しいタイムループ映画。

監督が竹林亮さんで、2021年3月に公開された「14歳の栞」という、実際に存在するある中学校の2年6組の35人に密着したドキュメンタリー作品で長編映画デビュー。
全員本人が写っているため、公開後のDVDや配信などは予定されていない幻の映画となっており、何かと、今大注目されている竹林亮さんの二本目の作品。

物語は・・・・
小さな広告代理店が舞台で、そこで野心的に働く女性が主人公。
激務な現場で次から次へとクライアントからの無茶ぶりもあり、月・火・水・木・金・土・日まで休みなく会社で働き続ける。日曜日、会社に泊まり、迎えた月曜日の朝、後輩2人から「僕たち同じ一週間を繰り返しています」と告げられ、タイムループに気づく話。そして、どうやら部長が原因らしいとタイムループ起きていることを気づかせようとする。

ほぼオフィス内でくり広げられる展開はまるで舞台を見ているかのよう。
B級映画のような、タイトル、見るからに低予算ではあるけど、想像の10倍を超える完成度高く、今までに無いタイムループでとにかく最高だった。


タイムループ映画といえば、よくあるのが気づいた人がまず原因を調査して、なんとか最短距離で問題を解決するために強引な行動したりする印象が強い。しかし、本作ではまず主人公が最初にタイムループに気づくのではなく、後輩が先に気づく。後輩たちは部長が原因かもしれないと考えながらも、後輩の立場から直接部長を説得することができないと判断し、1名ずつ先輩たちにタイムループに気づかせていく構図が見事。
先輩を通さないと部長に報告できない組織の雰囲気や、いきなりタイムループから抜けたら仕事に支障が出るからって最低限仕事をしておかないとっていう考え方、日本だからこそだなって真面目さに思わず笑っちゃう。

また、一週間という期間も絶妙。
同じ一日を繰り返す系のタイムループは多いけど、一週間という設定は初めてかも。一週間かけて部長にタイムループを気づかせようとするため、準備が間に合わない時は木・金あたりで諦める展開も笑えた。
一週間と期間が長いため、あれ?今何曜日だっけ見ている人が混乱しそうな設定にも関わらず、ちゃんとわかりやすく演出されているのも素晴らしかった。

あと、タイムループ作品によくある未来予知行動も良かった。
タイムループを繰り返すことにより仕事をこなすスピードが上がったり、クライアントからの無茶な要望も事前に資料作成したり、オフィスという舞台がうまく活かされてた。すごいアイデアやと思う。

オープニングのちょっとした工夫も好きだった。
タイトルからタイムループ映画とわかるため、わざとオープニングでくり返しの演出を出しており、今思えばあの瞬間から本作の世界観に没入させられたのかも。


キャスト陣は、主人公の女性を「円井わん」さんの複雑なキャラをうまく演じ、ちょっと情けない、一人だけタイムループに全然気がつかない部長を「マキタスポーツ」さんが演じていたのも良かった。
その他、あまり名前を知らなかったキャスト全員演技が上手く、全体の一体感が素晴らしかった。感覚としては初めて「カメラを止めるな」を見た時と同じようない印象を受けた。

劇中の挿入歌も最高。
「lyrical school」というHIP HOP系のアイドルグループの「TIME MACHINE」がループ真っ最中の展開にピッタリあっていて、心地よく店舗とサビがめっちゃかっこ良い。観賞後、毎日聞くくらいハマってしまった。

本作は、監督竹林さんの会社の上司が毎年「今年ことはすごいもの作るぞ」。とツイートしている光景を見て、あの上司タイムループしてね?ってなったのがきっかけらしい。
確かに仕事をしている人であれば、誰しもが一度は感じたことがある瞬間、繁忙期の時期、仕事が忙しすぎて、プライベートを楽しむ時間ない、そんな時に作成した資料の修正依頼を受けて、やり直している時間など「あー同じことの繰り返しやんか」ってポイントを上手くテーマにした映画なので、多くの方は共感しつつ、楽しめる内容になっている。

映画館内で何度も笑い声が飛び交うほど笑えるし、ストーリー展開が気持ちよく、誰でも見やすいので多くの人におすすめしたい。

ただ、単純に面白いだけではなく、実は「生きる」ことに対するメッセージもあり、感動もさせられる。
今作でタイムループに気づくのに重要な要素は「意識」である。
毎日ただ、だらだら過ごした時間は後から振り返ると、特別ではなく同じ日々を繰り返しているよう、体感としてはまさにタイムループを起こしていたようにも感じる。
自分自身どんなに仕事か忙しい時でも、そんなくり返しの日々からは抜け出すよう毎日を「意識」して生きたいと感じさせられる映画でもあった。

そして、Youtuberのあさぎーにょさん主演で製作されている「もう限界、無理、逃げ出したい」もYoutubeで見れる短編映画でめっちゃおすすめ。