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裸のムラのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

裸のムラ(2022年製作の映画)
4.1
「はりぼて」で富山市の市議14名ドミノ辞任をドキュメンタリーにした五百旗頭幸男監督が描く保守王国石川県の実態。これはおもしろかった。先日観て憤慨したTBS社員制作のドキュメンタリー「日の丸」では、お金返して、って思いましたが、こちらは「倍払ってもいい」と(一瞬)思ったくらい、クオリティの非常に高い作品でした。

おもしろ過ぎて、以下長文になってしまいました。スルーしてください。でも五百旗頭監督の政治ドキュメンタリーおもしろいのでオススメします。


焦点の当たった県知事は7期目の谷本氏。谷本氏の個人の問題にはしない、この地域の保守的な環境を炙り出そうとしています。

石川県の「戦後の知事」はまだ「4人」しかいない、超長期政権の土地柄。ドキュメンタリーでも、「お殿様や城主」にみえるシーンを拾い映しています。

<強い長老リーダーシップとそれに 呼応する周囲の忖度の存在で独裁政治と化する関係>
忖度が映像でもはっきり映り、わかりやすい図だけれど、これで終わらないところが凄かった。目のつけどころがシャープ👀です。

<長期政権と院政の関係>
花道(県公立大学)を自分で用意(設立)し、後継者を育て、後継者(馳浩)に譲り、後継者から花道の先(大学の理事)を任命してもらう。
ところがこの図でも終わらせていない。

 映像は、過去に遡り、どんどん人物は若くなる。

<青雲の志>
谷本氏の初勝利の若き映像に加え、馳浩、森元首相等々、引退された方々や今はドンとなった剛腕の方々の輝いていた時代、かつては若き獅子たちの勇姿をみせています。

<オチ>
なかなか凝っているなあと思いました。教育県と呼ばれる石川県へ3つの道を3つの家族の取材から暗示しています。

一つは、強いリーダーが自分の通った道を歩ませたい愛ある「教育の一環」。リーダーは同じことを繰り返させ鍛えさせます。

家族ではそうなりますが、政界では独裁と院政であり、保守的になっていききます。「ムラの形成」

もう一つは、先がわからないのだから、まずはやってみよう、新しい自分を発見しようと探し続ける実験的姿勢の家族。「ムラ社会から逃亡」してきました。

政治家たちが「新・時代」と永続的にに新しいと言い続けることへの揶揄でもありました。

3つめは、ムスリムの家族。日本人と結婚し日本は長いが、日本の国籍を取るつもりのない妻。見た目が異なれば国籍が日本でも、日本人と認められない社会だから、日本国籍取る必要はないと言う。娘はヒジャブを着けていても友だちでいてくれる人が本当の友だちだからヒジャブは外さないとも。

日本社会の中にいてはわからない視点で「ムラ社会を内外から」厳しく見ています。

この3家族の視点があることで、ドキュメンタリーに深みが生まれていました。


五百旗頭監督は、ドキュメンタリーについて尋ねられ正直に「意図があって切り取り編集していますが、やらせは一切しません。取材場所を指定したりの演出はありますが、こう話してくれとは指示しません」と、意図ありきを明確にしています。その意図と演出を探すのもおもしろかったです。動物使うのがうまく、くすっとしました。


この作品でも映像内に女性議員見当たらず、画面にはおじさんたちがぎっしり映っていて、なんかすごい絵面でした。

📖 調べてみました

👴60代以上の議員の割合
石川県   22/43人   51%
東京都 27/127人   21%

👩女性議員の割合
石川県     3/43人      7%
東京都  41/127人   32%
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