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裸の島のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

裸の島(1960年製作の映画)
3.9
サイレントではないけどセリフは入らない。ときどき環境音が入る。瀬戸内の小さな離島で自給自足する家族の厳しい日常を描いている。新藤兼人監督、乙羽信子、殿山泰司主演の著名な作品。海外からの評価も高い。

険しい山の斜面の痩せた土地にさつまいもや豆、もろこし、麦を植える。小舟を漕いで近隣の島から水を運び、天秤棒で桶を二つ担ぎ、山道を登り、乾いた畑に水をやる。それを日々何回も繰り返す。

鯛を釣れば、町に出て売り、衣服を買い、食事をする。

カットがうまい。また、一ヶ月で撮った作品とは思えない。モノクロで四季を感じる光の当て方。空の広さ、海面の輝き、素朴な兄弟の笑顔。自然と共に生きる家族。


ただ、私には作り事のフィクションにしか見えなくて、心動かず。寓話としても見ることができなかった。スコアは映像と実験的な試みへの点数です。

観ていて、なぜ?の疑問符だらけになっていました。

夫の開拓者としての夢に家族でついてこなければならなかったのか。

小舟で500mくらいしか離れていない大きな島が周りにいくつもあり、あえて飲み水すらない高台の島に移住する気がわからずじまいでした。水を貯める装置もなく、病気になっても病人運ぶのが先なのに。しかも借地で地代を納めなければならない。

頑固な夫についていかなければならない家族の悲劇にしかみえなかった。


日本的なネオレアリズモを狙ったのなら、本当の島暮らしを描いて欲しかった。離島ならではの知恵があるはず。水問題は大きいのに。暴風等、自然との闘いも描かれていなかった。ただの無謀な夫の夢に犠牲になる家族でした。


もともとあのモデルになった宿禰島は開墾されていたようだから、天秤棒で水桶を運ぶような農業の代わりにもっと合理的な灌漑があったのではないでしょうか。


リアリティーを求めて観てしまい入り込めませんでした。自分ならこうする、と島開拓者になったつもりで観ていました。木は切らず、頂上に植えて保水する。焼き畑をせず、はげ山に防風林をつくって乾燥を防ぐ。途中に溜池をつくる。土地が痩せるとうもろこしは植えない。塩害に強い作物、果樹等々。周りの島はそうしているのでは。
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