三樹夫

Pearl パールの三樹夫のレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.8
『X エックス』の殺人ババアの若き日を描く前日譚。何故あのようなババアが生まれるに至ったかというのを、脚本にミア・ゴスも参加して、鼻水垂らす熱演までしてという気合の入れようで作られたミア・ゴスのアイドル映画となっている。まず名前からしてミア・ゴスというホラーの申し子みたいなイカついパワーネームに、ホラーにぴったりのユニークな顔立ちという、この映画ではミア・ゴスの魅力が爆発している。EDクレジットの瞬き我慢競争みたいな鬼畜スマイルは一生観てられる。爆笑もしたけど。涙流すほど目をずっと開いて長時間キープするのを、ミア・ゴスが必死こいて健気に頑張っている様を観て萌えるというアイドル映画的ハイライトだった。必死こいて健気に頑張ってるというのが明確化、強調されているシーンである。
前作『X エックス』では『悪魔のいけにえ』を意識した16ミリフィルムのようなザラついた画作りであったが、今作では『オズの魔法使い』を意識したテクニカラーがパールの赤いドレスで表現されている。

この映画はミア・ゴスの魅力も相まってパールに凄い同情する。パールってほんと可哀そうなんよね。父親が要介護になって農場から出られないし、母親は毒親だし、夫はパールほったらかして第一次大戦に逃げやがるし、その上宗教的抑圧や当時の女性は性欲が無いという時代的な抑圧から欲求不満に加速がかかるしと、何もかもがパールにとっての抑圧となり重くのしかかってくる。母親から投げかけられた呪詛の言葉に縛られて苦しんでるのほんと辛い。蛆がわき腐敗していく子豚は、パールの心が蝕まれていく様を表現している。そらあれだけの超絶ロング告白になるわ。その後の義妹のドン引き退室は笑うけど。友達もワニしかいないし。『X エックス』では欲求不満なところにポルノ映画撮影隊が来ていたが、今作では欲求不満なところにヨーロッパのブルーフィルムを見せられるという相変わらずのイヤミか貴様状態。ほんと抑圧はよくない。母親は自分が苦しい目にあってるから娘が自分だけ楽しい目をするのは許さんというスパイト行動の抑圧者。親と子という立場を利用してマウントをとり相手を支配するクズ。ただそんな母親に対してパールが抱いていた感情というのは涙を禁じ得ない。
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