Jun潤

Pearl パールのJun潤のレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.7
2023.07.10

A24作品。
ジャンル的にはホラーということですが、予告編を見る限り、少女の狂気がメインであったり、暗くて静かな場面から一気にギャアアな感じじゃないあたりはスリラーだと考えるようにしています、頼む、マジで。
なのでシリーズ前作であり今作が前日譚となる『X』は未視聴です。

広大な農場で暮らすパールは、ダンサーという華やかな世界への憧れを持ちながら、体を悪くした父の世話と、母の異様な抑圧によって日々不満を募らせていた。
夫であるハワードは出兵したきり帰ってこず、時折街へ出ては母に内緒で映画の世界に魅了されていた。
しかし、映写技師との出会いや、義理の妹から聞いたオーディション開催の話を聞いたことから、パールは日々の変化を渇望する。
果たして、籠の中の鳥はパールの夢か、狂気かー。

ミア・ゴス怖っえ〜。
ダンサーを夢見ていたり、離れ離れになった夫のことを想ったり、新たな出会いに胸を躍らせたりと、普段見せている姿が純粋であればあるほど、時折見せる狂気の表情や行動がより不気味に写る。
また今作では、母の存在がシンプルに怖く描かれていたことが印象に残りました。
恐怖の対象を母に向けつつ、徐々にパールへの恐怖を駆り立てる。
果たして母がパールに向ける感情は、嫉妬に似た愛情なのか、狂気を外に出さんとする使命感なのか、良い意味で明確にしない仕掛けが効いていたと思います。

演出面でも、場面の切り替わりなどがレトロになっていて時代を感じました。
また、当時のスペイン風邪のパンデミック禍における人々の生活が、現代のコロナ禍にも見られる状況と同じように感じられて、どこか現代風にも見える作品になっていました。

序盤や母が本当の思いを吐露した場面、ミッツィとパールの関係性からは、女性同士の嫉妬がメインの軸になっているように感じました。
母がパールに向ける感情は、自分と同じ思いをさせたい、自分とは違う望む通りの道に進んで欲しくないという思いなのか、本当かどうかは実のところよく分かりません。
しかし先天的にせよ後天的にせよパールが内に秘める狂気を、外に出させない、外に出てしまったとしてもきっと今よりも辛い目に遭うという思いの面では、自分の身を持ってパールに全てを曝け出させてしまった。
その結末については、皮肉が効いているというか、何の救いもない感じがして、スリラーにふさわしい苦味のある終わり方をしていましたね。
Jun潤

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