MikiMickle

Pearl パールのMikiMickleのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
4.0
A24フィルム初の3部作。「X」の続編

舞台は1918年。スペイン風邪の流行により昨今のコロナ禍と同じような排他と警戒の閉鎖的な世界。かつ、第一次世界大戦真っ只中の不安定な状況。
志願兵として兵役している夫ハワードの帰還を心待ちにしつつ、ドイツ系移民で厳格な母と重病の父と共に暮らすパールは日々不満を持っていた。
農場の平凡な暮らしと両親に縛られ、田舎娘あるあるな「私はここではないどこかへ行きたい」願望に溢れ‥

そんな中、母の目を盗んで見た映画とそのダンサーに憧れ、「私はスターになるのよ」と夢を抱く。
が、それは我慢と鬱屈した人生の中に生きていた彼女の、心の根底にある邪悪な何かがはじけるきっかけでもあった‥‥‥


前作「X」で大活躍したパールさんの前日譚の今作。
まず、前作でもそうだったのだけれど、フィルム映画の雰囲気や懐かしいレトロなカット割りを魅せつつ、広画角で美しい映像にまず心が惹かれる。美しい農場の中で描かれる狂気は更に美しく恐ろしい。狂気のディズニー的な美。ダークファンタジー!

そして、この映画の一番のポイントはミア・ゴスの感情の異常ともいえる起伏と、いかにして殺人鬼が産まれたのかという流れとそれに関する細かなポイントの数々。

例えば、沼に住むワニに対してセダ・バラ(1910年代のサイレント映画時代のセッ クスシンボルであった女優)を彷彿とさせる名前をつけ、餌付けしている印象的な姿。
餌付けの餌たちは、自らの願望への踏み台の象徴(というかまさしくそれぞれがそれそのもの。)であり、
サイコキラーへの成長の過程でもあり。
ドレスの雰囲気と色の変化もしかり。

これらは1910年代に限ったことではない。
現代の人々にも通じる鬱憤の象徴でもあるのだ。
だからこそ、この狂気の殺人鬼パールに対して、恐ろしさではなく共感と愛おしさを感じてしまうのかもしれない。

そしてミア・ゴスの表情が兎にも角にも素晴らしい!!
自信と挫折と狂気と苦しみと我慢と喜びと嫉妬と嘆きと後悔と‥
笑っちゃうくらいすごい。
あの狂気的な顔の中に積み込まれた感情の起伏は、それはもう恐ろしい圧力と気持ち悪さと変な可愛さで、
ずっと見ていたくなっちゃいます、面白すぎて怖すぎて最高で(笑)

続編楽しみすぎるーー♡
MikiMickle

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