ハヤメソソ

美と殺戮のすべてのハヤメソソのネタバレレビュー・内容・結末

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

写真家ナン・ゴールディン。
著名な芸術家であるからこそできた、闘いと実現の記録です。
アメリカで広く鎮痛剤として処方されているオキシコンチンは覚醒剤的側面があり多くの患者が死亡したり今も苦しんでいる。(記録だと10万人が死んだとのこと)
実際に被害に悩まされたナン自身が、開発したサックラー一族の名を美術館から消し去ることと一族からの寄付の拒否を目的に、立ち上がり戦っていく様を記録したドキュメンタリー映画です。
「サックラー一族は人殺しの一族!」とシュプレヒコールを上げ、メトロポリタン美術館を始め、サックラー家がオキシコンチンで得た資産を寄付している世界中の名だたる美術館で、仲間たちとデモ抗議をします。莫大な寄付をしているので、サックラーの名が美術館に刻まれているのです。
これの凄いし強みだと思う点が、行った先の美術館にはナンの作品が収蔵されていること。すでに名声も財も成す芸術家が、サックラー家からの寄付を受けるなら自分の回顧展をやらせないと言うのです。美術館にとってはかなり痛い。
でもサックラー家の寄付金は正直ありがたいでしょう。
ナンらの抗議行動はすぐには実を結びませんが、最終的にはほとんどの美術館が寄付を拒否し、「サックラー」の名を冠した表示を消したのです。
なんたる快挙!!

この出来事は、芸術の分野だったことと著名な芸術か自身が自ら動いたことが大きいのだと感じました。
世に溢れるこのような抗議行動が、そのほとんどが黙視されているのが実情でしょう。
ちょっと感動でした。

同時にナンの生い立ちも描かれますが、なかなか壮絶です。様々な要因が彼女を突き動かしたのだと思います。

あと、今度はサックラー家の側からなぜこんな薬を開発してしまったのかという映画を観たくなりました。
どういう流れで加害者になってしまったのかに興味引かれます。

そしてふと、思い出す。坂本教授の死が惜しまれてならない…。