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美と殺戮のすべてのnenecoのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
3.9
ものすごいエネルギーとパワー。

写真家ナン・ゴールディンという人を失礼ながら知らなかったのだけど、こんな映画のような人生を送ってきてることに純粋に驚くし、とてつもなくロックでパンクな人物だった。

映画のような、というのはもちろんドキュメンタリー映画として編集してるからだろうけども、生い立ちから始まってなかなか常に波瀾万丈である。

記憶は忘れてしまうから、と自身が受けた恋人からのDV殴打跡のセルフポートレートまで写真集に残し(絶対忘れないぞという怨念めいたものまで感じたが)、見た者に“暴力を振るった側を許さない”と明確に思わせる、ある意味現代ぽい手法を当時既にやってたことが先進的。

そして自分自身も一時は闇に呑まれそうになりながらも何とか這い出でて、人権の尊重・偏見や差別を無くしたいという思いでいつも自分以外の誰かのために立ち上がり、自身が名声を得た後も権力に阿ることなく悲しむ人々に寄り添い、社会に声を上げ続け立ち向かうその姿は間違いなくヒーローだった。本当にカッコよかった。

一人の人間の闘争の記録として見応えがあった。
最後にこのタイトルの意味がわかった時、鳥肌が立った。
作り物ではない70’s〜80’sのアメリカの文化・風俗の一片が見られるのも興味深かった。
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