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美と殺戮のすべてのlily0x0のレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
4.0
中身の詰まった重厚感のある作品
6部の構成でオピオイド危機やエイズ、性などについて語られるけれど、ナンがここまで突き動かされ行動した理由は姉に始まり姉に終わっていました
姉が人生の道標を示してくれ、きっかけとなってくれたことで、オピオイド危機やエイズ、セクシュアリティについてなど彼女の人生において意義あるものになっていく
生き延びること自体がアートで、生のありのままを切り取った瞬間を写真に収めることの意味
姉の自殺までの道のりについては記録が全然なく、両親の中でも都合の悪いこととして闇に葬っていました
そのため、ナンの中ではあくまで記録でなく物語と表現されています
けれど、ナンが撮る写真は物語ではなく記録として残るからこそ、撮り続けることに意味があるのですよね
そして、言葉の代わりとして彼女が1番人に伝えやすい手段なのだと感じました
辛すぎる現実をたくさん知ることになるけれど、観終わった後の充足感がすごかったです

オピオイド危機がこれほど深刻だとは…
日本は術後、退院時処方から麻薬の内服開始ということはまずないですよね
疼痛の急性期は医師の管理下で病院において麻薬が使用されるけれど、非オピオイドで対応できるまでになってから退院が多いと思います
アメリカの医師の処方がどうなってるか知らないけど、日本では医師全員が麻薬処方できるわけじゃなくてちゃんと免許ある医師じゃないと処方できないですし、慎重に処方するのが当たり前なので
あんな100錠とか入る容器のまま処方することもないですしね
アメリカのオピオイド危機を扱っている作品を初めて観たので、日本人が知るという意味でも非常に意義のある作品だと思いました
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