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アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.0
[巨悪と戦う民間人ヒーローたち] 60点

2022年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。1983年12月、アルゼンチンは軍事政権から民政移管を達成し、ラウル・アルフォンシンが大統領となった。すぐに軍事政権高官を人権侵害で裁判にかけることになったが、軍部は彼らが軍人であることを理由に軍事裁判を行おうとし、膠着状態に陥っていた。映画は壮年検察官フリオに裁判前から密着し、裁判の一部始終を克明に描写していく。司法サイドは誰も裁判に乗り気じゃないか軍部の支持者だったので、経験のない若者たちを登用したという少年漫画の鉄則のような仲間集めから始まり、証拠集めに証人集め、裁判の途中経過と世論の反応を過不足なく収めており、結果的に140分と長尺化したと思われる。とは言っても、本作品における裁判はアメリカの裁判映画のようなドラマティックな描き方はせず、被害者たちが証人として当時のことを語る場として映しているに過ぎない。寧ろ、検事と副検事の人間的な側面から国家と個人を描こうとしている。ウェルメイドな裁判映画だが、それ以上の印象はない。それはそれとして、三権分立がキチンと機能しているのは羨ましい。
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