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ボーンズ アンド オールのpikuminのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
3.7
人を喰らい人を愛す。自我に目覚め、愛に目覚め、本能と道徳の狭間に揺れる少年少女たちのヒューマンドラマというのが正しいところか。

穏やかな日常風景に漂うほのかな血生臭さ。『君の名前で僕を呼んで』を彷彿するように、美しい日差しが少年少女の無垢な愛を照らし、彼らの生を映した。耳障りなハエの羽音を音楽として捉え、さらにはそのニュアンスをシンセで鳴らし続ける。血生臭さを傍に添え続けたトレント・レズナーらによる音楽も相まって、我々にとっていつしか人喰いが異端なものではなく、当たり前のようなものと化していく。彼等も、その日常も。どれひとつ異端ではないのだ。

そして、彼らに芽生える孤独や抵抗、不安も、人を愛し生を全うする姿もけして異端なものでなければ、人喰いの是非を問うものでもない。生き方はすべてのひとに委ねられている。

倫理を行いとして捉えるのか、心として捉えるのか。はたまた人喰いになるということはすべてを失えということなのか。対比を描き、その判断を少年少女と我々視聴者に問いかける。

"骨まですべて"は、ただの夢物語でもないし、メンヘラ的願望でもない。骨まで喰らうということは、人の生と死を背負うことへの覚悟を持つこと。ラストシーンの一間を観ると、そう痛感せざるを得ないのだ。
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