ぶみ

スクロールのぶみのレビュー・感想・評価

スクロール(2023年製作の映画)
3.5
生きること。
  愛すること。

橋爪駿輝が上梓した同名小説を、清水康彦監督、北村匠海、中川大志、松岡茉優、古川琴音等の共演により映像化したドラマ。
学生時代の友達の死をきっかけに、人生を見つめ直すこととなる主人公等の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる「僕」を北村、友人ユウスケを中川、ユウスケと交際する菜穂を松岡、僕と同じ職場の女性を古川が演じているほか、忍成修吾、MEGUMI、莉子、水橋研二、三河悠冴、金子ノブアキ、相田翔子、円井わん等が登場。
物語は、僕を始めとした四人の群像劇が章立てさらて展開、冒頭、何だかよくわからない寓話に出てきそうなレストランでの長回しでスタートするが、その意味も最終的には回収されるとともに、以降も随所に長回しのシーンがあるため、本作品の象徴的なものとなっている。
前述のように、主演四人に加え、個性派メンバーが勢揃いしているが、中でもインパクトを放っていたのが僕の上司を演じた忍成で、見事なまでにパワハラが炸裂しており、助演賞もの。
当然ながら、主演となる若手四人は、日本の映画界を背負って立つに相応しい抜群の演技力を見せてくれており、ずっと観ていたいと思わせてくれるのだが、一見若者の生態を切り取ったかのような世界観ながら、リアリティが微妙に薄く、ご都合主義的な展開が多いのが難点か。
反面、市役所の市民課で働く菜穂の実家のシーンにおいて、白いトヨタ・クラウンと日産・エクストレイルをガレージに置くことで、菜穂の両親の財力や価値観を示していたのは細かいところながら秀逸。
自分を投影できるようなキャラクターはいなかったものの、周囲にはいそうな人々ばかりであり、東京の空の下、息が詰まりそうな社会に対する閉塞感が伝わってくるとともに、スクロールさせることで一瞬で情報を見えなくすることができるデバイスとは違い、人生とは向き合わざるを得ないことを若手四人の確かな演技で描いた一作。

いつだって全てをスクロールさせて。
ぶみ

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