atsuki

なのに、千輝くんが甘すぎる。のatsukiのレビュー・感想・評価

4.0
胸キュンなのはラブストーリーよりも編集の見事さ。たとえば片想いミッションから好きになってしまうまでの前半部では、とくにカットを割ることに拘っていたと思う。人物のアクション(走ること/止まること、近づくこと/離れること)とリアクションでつなぐことの小気味良さ。想いを伝えるまでの後半部では、階段を登り続ける。それは高橋恭平と畑芽育の高低差がふたりの関係性に結びついたからである。階段を登り続けなければ、相手を追いかけたところで人違い、目を合わせるために願ったところで勘違い、電車が揺れたふいの接触も視線の交わらない瞬間として処理される。「ごっこがなければ目すら合わない」という視線劇のなか、ついには見上げていた畑芽育が競技場で見下ろすことになる。立ち位置の変化が関係性の変化、つまり片想いは両想いになる(この両想いは片想いへの片想いというさらなる視線劇でもあった)。キスシーンの切り返しをエンドロール後に見せる過剰さもいい。
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