"…完璧な…完璧な瞬間が来るまで…僕の話を聞いてくれないか…"
"ある男"が起こした誘拐監禁事件…その犠牲者工藤麻衣…49日後、解放されて再び学校へ戻るも、周囲の好奇な目に晒され…
何がそんなに面白くないのか…度重なる問題行動により、周囲から疎ましく思われていた氏家隆史…だが、氏家だけだった…学校に馴染めず浮いた存在の麻衣に話しかけたのは…
"…俺、このままじゃあ人殺すかも…"
全くノーマーク、前情報無し、でも何故か私の心に引っ掛かり鑑賞…良かった…
上村侑演じる氏家のふてぶてしさの向こうに見え隠れする脆さ…この年代特有の苛つきさを実に見事に表現していまして…それに対しての羽音演じる麻衣の透明感が印象的で…決してキラキラとした青春映画ではないのですが、何処か危うげでいて優しい世界が広がっているような気がします。
本作の狂言回し的存在の"ある男"、麻衣そして氏家…皆、社会に馴染めない謂わばマイノリティな存在ではあり、"今まさに壊れそう…"そんな不安定感が作品全体に漂っているようで…
上映後のトークショーの中で、本作のテーマを"許し"と説明していた林隆行監督…あ〜なるほどと膝ポン…ほぼ短編とも言って良い尺の中に完成度の高い濃密な空間が描かれている秀作です。
林監督のほぼほぼ自主制作だそうで、元々オムニバス映画の一編だった本作ですが、この度初の単独公開の運びとなったそうで…今のところ上映している劇場がアップリンク吉祥寺のみという現状ですが、中々の力作ですので、沢山の映画ファンの目にとまるといいな〜っと思った次第です。