やまもとしょういち

インスペクション ここで生きるのやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

3.9
オンライン試写にて。軍隊という特殊な状況でブラック・クィアの困難が際立ち、また他方でセクシュアリティと関係なくひとりの人間、ひとつの命として同胞を思う気持ちとして主人公フレンチが尊重されるという、クィアを取り巻く現実が多面的に描き出されているという印象を受ける。

エンドロールまで気がつかなかったけれど、インダストリアルなサイケデリアで画面を彩った断片的でアブストラクトなビートのような劇伴はAnimal Collectiveによるもので、特に前半部分、あえて描かれなかった主人公の心情や海兵隊に入隊した覚悟のようなものが音楽を通じて描き出されていたように感じた。それがこの映画に新鮮な印象を与えていたし、作品の強度を二段階くらい高めていたんじゃないかなと思った。