やまもとしょういち

ソナチネのやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.2
「物語」という観点からのみ見たらどうってことのない部類に入ると思うし、展開は後ろ倒しにされ、引き延ばされた結果、正味30分程度のスケールのエピソードではあると思う。だけれども、見せ方やさまざまな技が冴えわたる痺れる映画だった。

たとえば、沖縄に来て早々に車の前に村川らが佇む、ほんの10秒ほどのショット。物語上不要だし、意味も脈絡も薄いまま挿入されるシーンにも関わらず、絵としてとにかく鮮烈で思わず「かっこいい…」と声が漏れる。ビートたけしの存在だけでここまで魅せられてしまうとは……奇跡的なカットの数々にやられてしまった。

そして、なんとなく弛緩させている時間に突然差し込まれる暴力や笑いという緊張感、非日常感、違和感がもたらす落差やギャップを作品のなかで本当に巧みに構成していることも印象に残った。画面から目を離せなくさせる映像の作り方、構成は相当すごいレベルで惚れ惚れした。