Adele

インスペクション ここで生きるのAdeleのレビュー・感想・評価

1.0
主人公の25歳のフレンチは16歳の時に家を出た
理由はゲイでそれを母親が拒絶しているから
居場所がない
そして時は2005年
当時はブッシュ政権でイラク戦争の真っ只中
アメリカでは米軍入隊を盛んに促す
勿論、ただで入隊を薦めるわけではない
それ相応の待遇がある
フレンチのように居場所がない者やその待遇目当て、もしくは人を殺してみたいという理由で志願する者もたくさんいる

あらすじだけ読むとフレンチと母親とのやりとりの他に米軍の前線でバリバリ戦闘するのかと思いきや、海兵隊へなる前の志願兵、すなわち、鬼の特訓模様がほとんど描かれている
この手の作品にありがちな畜生な鬼軍曹、思いやりのある上司、意地悪な同期等、その点については全く目新しさはない
余談だが、海兵隊になるための訓練は並大抵ではないのは米軍の知り合いから聞いていた
しかし、この手の映画を見過ぎたせいか、いかんせん、フレンチ達の特訓の過酷さがあまり伝わってこないんだよな…
でも、まぁ今作は特訓の過酷さよりも立派な海兵隊になるまでのフレンチの過程がみものですから

個人的にぐっときたのは
『自分の知り合いや友達は刑務所か死んでしまった
でも、海兵隊の制服で死ねば自分はただのゲイではなく、英雄になれる』
というフレンチのセリフ(多少、違うかもしれませんが意味合いはこんな感じだったはず)
なんと悲しいアメリカの現実なのだろうと
同性愛者であるという事実の何が悪いことなのだろう?
人が人を好きになるのになぜ性別が関係あるのか?
なぜ、同性愛者というだけで拒絶され、袋叩きにされなければならないのか?
なぜ、ストレートでなければいけないのか?

フレンチの母親も最後の会話で苦労してきたのはわかる
息子のことを愛しているが性的嗜好は受け入れられない
私からしたらこんな不甲斐ない毒母なのに、フレンチは母親想いで優しい子だ

親子だから全て理解できるわけではないし、全て受け入れられないものもある
これもまた悲しい現実だ

作品的には各賞を受賞したり、評価されたのも頷ける作品でしたが、個人的には淡々と進み、もう少し深みが欲しい内容でした
Adele

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