大洪水が起きた世界で生きる人々の物語

約90年前の映画でありながら、世界が崩壊し大量の水に飲み込まれていく瞬間の迫力と絶望感は、昨今の作品に引けを取らないほど魅力的である。ストーリーはやや急足だが、災害を乗り越えた人々が織りなすドラマは見応え十分。周囲から大切なものが消えた人間と無事だった人間の精神力の違いを繊細に描き分け、二転三転していく展開を彩る人間模様は味わい深い。

年月が経っても色褪せない魅力に溢れた、災害映画の原点。

1933年にしては規模、クオリティにおいて最大級の都市破壊特撮が観られる作品としてタイトルだけ知っていた。なんでも地震と津波がニューヨークを壊滅させるシーンを除いてフィルムが散逸していたらしい。近年イタリア語版が発掘されたらしい。たまたま見た物は音声もちゃんと英語で復元されていたバージョン。タイトルだけは後から作り直したものになっていた。

その特撮シーンは序盤にあり、あとは生き残った人たちの愛憎劇になるので全体としては地味な印象。世界のどこかで離れ離れになった男女、という話なので、『日本沈没』のその後を描くとこんな感じになるのかな、と思った。

恐ろしいほどリアル。どうやって撮ったの。