かなり悪いオヤジ

ヴィーガンズ・ハムのかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.5
こんな不謹慎なアラブ人ばかりだったら、🇵🇸の人々もガザであんな悲惨な目に合わずにすんだのではないだろうか。なにせ本作の主人公アラブ系の移民にも関わらず肉屋を営む根っからの肉好き。成長ホルモンを使っていない純血の肉を売ることに拘りがあるせいか商売の方はさっぱりなのだが。

そんなさえない肉屋に“Vパワー”と名乗るエコテロリストたちが覆面姿で乱入してきたから、さあ大変。そのエコテロリストたちの一人を取っ捕まえようとしたところ誤って車でひき殺したしまった肉屋。証拠隠滅のため特大の🔪でバラバラにした肉を“イラン豚”と偽って偶然ハムにして売ったところ、これが予想外の美味で店は大繁盛、ヴィーガンさまさまなのである。

つまり、牛と同じ草食系の人間の肉は食ってもやはり旨かったという超ブラックコメディになっているのだ。映画全体の雰囲気は、フレンチコメディ『地下室の変な穴』のカンタン・デピューに限りなく近い。こちらの方が下世話かつストーリーにちゃんと落ちがあるため、どこかシュールなデピュー作品よりもわかりやすい。

美術館への襲撃を繰り返すエコテロリストのヴィーガンどもをハムにして食っちまったら、さぞフランス伝統の肉食系保守は大喜びするんじゃないか。本作の主役兼監督をつとめているファブリス・エブエは、(どうも見た目よりずっと歳が若いようなのだが)さすが本業はスタンダップ・コメディアン、観客の脂肪もといハートを料理する?のが実にお上手なのである。

しかもイスラム教では禁止されている“豚肉”を主食に選んだあたり、アラブ系移民という自分が置かれている立場を逆手にとった捻りのきいたシナリオが、在仏ムスリムとの関係がかなりぎくしゃくし出したフランス人インテリにとっては間違いなく“ツボ”だろう。猟奇殺人ドキュメント番組の熱心な視聴者でもある白人の美人奥様が、エブエ扮する商売下手な旦那をサディスティックに調教するくだりも👍️なのである。

肥満のヴィーガン白人男たちを次々とハントしていく肉屋の姿が、だんだんとパリでテロをしかける過激派に見えてきたのは私の気のせいだろうか。要するに、イスラムだろうがカトリックだろうが、本作のようなブラックコメディに笑い転げられるお方は精神的に非常に健全なわけで、ガザで起きている大量虐殺などまったくの茶番劇であることに気づけることだろう。