Jun潤

福田村事件のJun潤のレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
3.8
2023.09.07

史上最大、一日邦画四連弾一作目。

井浦新×永山瑛太×東出昌大。
今年で関東大震災からちょうど100年、そして今作の公開日が震災のあった日と同じ9月1日というのは、なかなか映画としての価値も高いのでは。
予告の感じだと震災そのものよりもそれを契機に発生する流言飛語、そこから始まる悲劇や滲み出る人間の狂気を、事実を基にして描く感じ。
全国的なものだとコロナの禍中や東日本大震災の時にも、同じような出来事は起きたと思うし、個人的に印象深いのは2018年に発生した北海道胆振東部地震ですね。
当時、主にインフラ面で被災した身としては、SNS上で拡散されたデマ情報にだいぶ弄ばれました。
100年前という、SNSもネットも、メディアすら今とはかけ離れていた時代において、天災に遭った人たちは何を思い、何をしたのか、色んな想いを巡らせて鑑賞です。

1923(大正12)年、千葉県福田村。
朝鮮での教職を退いて福田村へ帰郷してきた澤田智一と、その妻静子。
福田村の閉鎖的な環境と、日露戦争後の朝鮮半島と日本の関係性から、村内には不穏な雰囲気が滲み出ていた。
一方、香川県から旅を続けていた行商人が、福田村へと入る。
そして迎える9月1日、関東大震災当日ー。
それまでにあった人々の不満や嫉妬、罪の意識が発憤し、凄惨な悲劇へと向かってゆく。

な〜るほどなぁ。
震災から100年経って、20世紀は終わり21世紀が始まって、時代が大正から昭和・平成を経て令和になっても、全く変わることのない人間の醜さや愚かさ。
交通設備やインターネット、メディアなどが充実して国内外の人とのコミュニケーションが可能になっても、科学が発展して自然現象のメカニズムなどが徐々に明らかになってきても、日本人は、人間は、信じたいものだけに妄信する、疑わしきを罰せずにはいられない、なんとまぁ。

ぶっちゃけ作品としては地震が起きてからが溜まったフラストレーションを発散させる最高の展開だったのですが、それぞれの登場人物の事情にフィーチャーして、というよりは村そのもの、日本そのものの心情に寄っている、というより広がってしまっていたなぁというところ。
しかし村人一人一人にしても国全体にしても、当時の世界情勢に対する意識や、不理解からくる猜疑心に違和感はなく、リンクの深さが思ってたほど無かっただけで繋がりは十分感じられる流れでした。

これまで酷いことをしてきたのだから仕返しをされて当然、そうだとしても自分達の理解が及ばない相手に対しては大人数で囲んで槍を突く、根拠のないデマを国も新聞も煽り散らして、貧困層はさらに下の身分を探しながら金の匂いがする方へ。
いずれも作中の描写ですが、こうして見ると100年後の現代でだって、ネトウヨやらネットリンチやら、マスク警察?反マスク警察?、GoToにイソジン、事あるごとにトイレットペーパーやティッシュ系は買い占められる。
こんなにも人間は変わらないもんですかね、まだ100年しか経っていないのなら仕方ない話なんですかね。
今作での憲兵たちの権力欲などなどが、現代のインターネット上では歪んだ承認欲求とか尊大な自己肯定感に当たるのかな、なんて。

ピエール瀧はいつの間に復帰していたんですか!!
Jun潤

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