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福田村事件のfilesのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.2
貴方は偏見の誘惑に耐えられるか?

映画館の扉を開けると、そこはめくるめく偏見の世界。部落、朝鮮人、ハンセン病、政治思想という分かりやすいキーワードだけではない。軍人、教師、庄屋、小作農といった旧時代の職業差別、東京、千葉の田舎、讃岐といった出身地の差別もある。
「私は差別しない」と現代人ぶってズンズン突き進んでいっても、男女の色恋の偏見につまづきそうになる。「このヒト、何かやらかしそう」と本能的に感じてしまう。服の着崩し方など総合的な演出で醸し出しているのだろう。

旧時代の差別は先人の努力でだいぶ改善されているのだろうが、現在進行形の差別がたくさんあることに気づく。
SNSが生み出した、出演している芸能人に対する偏見。そして、ミニシアター映画への偏見。芸能人に対しては言うまでもなく、ポスターの印象だけで見るのを躊躇しているひとは多くないだろうか。ミニシアター映画は難解と思われがちだが、この映画の構成はとても分かりやすい。テーマそのものの政治性さえなければ、シネコン上映してもおかしくない。

数々の偏見にあてられて、フラフラになって映画館を出る。「あー、福田村ってこわいな。」とつぶやく。

…肩に乗っている、最後の偏見を振り落とすのを忘れていませんか?
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