へいゆ

福田村事件のへいゆのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.5
繰り返す歴史を感じずにはいられない不穏な自分の気持ちに気分が沈んだままでラストを迎えた。

関東大震災の混乱の中、デマや流言によって引き起こされた朝鮮人への虐殺は日本史で学んでいたけれど、千葉県でこんな事件が起こっていたなんて知らなかった。殺されたのは方言や持っていたものから「朝鮮人だ」と決めつけられた日本人だった。

100年前に起きたこの事件をおそらく丁寧に再現している構成だが画面で繰り広げられる人々の混乱はいつの時代であっても発生しうる。
コロナ後、世界で紛争が起きている今だってなにかのバランスが崩れたりトリガーになるものが動き出したら簡単にこうなる。そして自分があちら側にもこちら側にもなりうるということを改めて気づかせてくれる。

歴史は今と地続きで、関東大震災前後だって韓国併合、朝鮮独立運動、水平社宣言、治安維持法、そして戦争へと進んでいった。なにかひとつひとつの単独の出来事は世界や社会の他のトリガーになり、そして連鎖していって時代が作られる。
今だってその真っ只中にいて、世界がなんだか不穏な方向に進んでいるような気がしていて、この映画のストーリーがいまの時代のそれと合わさっているような気がして、とにかく観ていて気分が沈む映画だった。

森監督しっかり芝居映画創れるのならこれからも続けてほしい。
役者陣も豪華であり芝居がかっていることで史実のテーマをエンタメとして見られる効力もあったと思う。この著名俳優だからこそ、自分ごと化できることもあるし、エンタメにも振り切れるし、とにかく絶妙だと思う。
へいゆ

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