そーいちろー

福田村事件のそーいちろーのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.0
おそらく、予算はそんなにかかってないはずなのに金をかけても薄っぺらさしか感じない昨今の日本映画(もどき)への強烈なアンチテーゼたりうる、日本映画の歴史に名を刻むべき「戦争映画」である。関東大震災を一つの極点として、千葉の田舎町の人々、香川の田舎町を出発した行商人一行、日本統治下の朝鮮から故郷の千葉の田舎町に戻ってきた夫婦が、それぞれが抱える感情をもとに、破滅のその瞬間に向かって進んでいく様子を描いている。実在の事件をもとに描いた作品であり、マスヒステリーと人間の根っこにある「未知なるもの」への恐怖心、差別意識が本人達も想像し得ない惨劇を生むことを見事に活写している。一人一人の様々な感情の妙を非常に的確に描いていて、それがかなり論理的に惨劇に結びつく様は、シナリオの勝利かな。コロナでもいまだにこの国自体が集団圧力と非合理性のもとに動いていることが明らかになった以上、本作は今観られるべき、今を描いた映画ともいえる。
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