このレビューはネタバレを含みます
自警団による集団虐殺事件を描いた作品。
映画の前半は、福田村の住民達がじっくりと描かれます。
後半の展開は予想がつくだけに、前半の人間ドラマで映画に引き込む必要があったのだろうし、様々な事情を抱えたキャラクター達の人間模様を見れて楽しめました。
ただ、2時間越えの長尺を考えると、もう少し短くしても良かった気がしますし、説明台詞というか、平板な演出やカメラワークに白けてしまう場面もあったかな。
女性の生き辛さを描くのに、やたら性愛を絡ませるのも偏っていて、もうちょっとバリエーションがあっても良かったかもしれません。
そして、映画は人間ドラマだけではなく、事件に繋がる当時の空気感や背景も描いていきます。
軍国主義や人種差別、排他的な村の因習、デマや偏見を垂れ流すマスコミ、更には震災による不安や緊張が彼らを暴走させていったのでしょう。
一度抜いた刀はなかなか鞘に戻せない…という感じで、引くに引けなくなった集団心理は恐ろしいものがありましたね。
個人的に興味深いなと思ったのは、朝鮮人に対する噂が日本人の罪悪感に根差している事。
「朝鮮人は日本人に虐げられているから復讐するはずだ!」と思うという事は、朝鮮人を虐げている自覚…罪の意識があるという事だし、罪の意識があるという事は、本音では朝鮮人も日本人も同じ人間である事は分かっていたんじゃないかな。
そうした自らの加害性とは向き合わず、被害者意識だけを肥大化させた結果、朝鮮人を悪魔化させていったのでしょう。
兎角、日本は敗戦国であり、戦争に対して被害者意識が強いですが、一方で日本が加虐し、虐殺してきた歴史もあるわけで。
そうした歴史を消し去ろうとする運動もありますが、例え、歴史を消し去ったとしても、朝鮮人への罪の意識は消えないし、むしろ歴史を修正したという罪の意識が加わるだけで、自らを苦しめる事になる気がしてなりません。
福田村事件を繰り返さない為にも、差別に囚われず乗り越えていく為にも、日本人なら是非見て欲しい作品です。