シズヲ

殺しの分け前/ポイント・ブランクのシズヲのレビュー・感想・評価

3.7
ハードボイルドのような禍々しき何か。冒頭から時系列が狂気的に入れ替わり、状況説明の段階なのにいきなり困惑へと叩き落とされる。同時にインパクトを与えてくるのは洗練されまくったカットの数々。タイトルが出てくるシーンなどスタイリッシュな絵面・編集の連続でガツンと殴られる。そんなこんなでシチュエーションも曖昧なまま物語に放り出されるが、リー・マーヴィンが仲間に裏切られたので復讐に舞い戻ってきたらしいことは伝わってくる。スーツ姿のリー・マーヴィンがめちゃくちゃカッコいいのは言うまでもないし、冷静沈着な彼が見せる躊躇ゼロの暴力性は強烈で素晴らしい。

演出が控えめになる序盤以降も説明的な描写を殆ど挟まず、根本的な部分が不可解なままシュールに話が進む。それでいて時おり顔を出すアバンギャルドな演出は不思議なセンスに溢れていて、化粧に勤しむリンが合せ鏡で映るカットやクラブでのシーン等といった映像に大胆な先鋭性を感じさせられる。リー・マーヴィンを軸とした状況の曖昧さや過去の唐突なフラッシュバックもさながら主人公の主観世界めいた異様な雰囲気を醸し出している。主人公が影の中に溶け込むように姿を消すラストの描写も相俟って、ハードボイルド調なのに色々と前衛的で奇妙な趣を感じずにはいられない作品。
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