このレビューはネタバレを含みます
井上光晴は講義の中で、人生の年譜において場面場面で切り取られたものだけを語り、それ以外の隠された部分に触れないのはフィクションであると語っていた。
この映画もそれと同様で、井上光晴の年譜もあえて語られない部分の真実がフィクション以上に波乱に満ち溢れていたというものであった。
闘病生活に密着して行く過程で語られる真実は彼の裏の年譜でありノンフィクションでもおかしくないものだった。
でも井上はそんなことなどなかったかのように今日も変わらず弁舌を振るう。
井上の声質が良くて聞きやすく、またその声から来る説得力も相当なものである。
そりゃ瀬戸内寂聴も懇意にするわなと思うほど人間臭さが溢れる人であった。