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ヒトラーのための虐殺会議のMaoryu002のレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.4
1942年、ハイドリヒ(フィリップ・ホフマイヤー)を中心にナチスドイツ高官が集まり、ユダヤ人の撲滅について議論するヴァンゼー会議が開かれる。役割や方法について意見がぶつかる中、アイヒマン(ヨハネス・アルマイヤー)が恐るべき計画を語り始める。

楽しさはなく、不快なばかりだけど観る価値のある作品だった。
“ユダヤ人問題” の解決のために、役人と軍人の縄張り争いを繰り広げ、負担の押し付け合いを延々と続ける。
聞いていて、これは環境問題か何かの議論か?と感覚が麻痺してくるのが恐ろしい。

そんな中で、最も実務的で切れモノに見えるのは、あの悪名高きアイヒマン。
「ハンナ・アーレント」「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」「アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち」なんかとあわせて観ると、より人物や歴史の闇が見えてくるだろう。

ユダヤ人を毛嫌いするくせに、その財産の奪い合いで内輪もめ。2分の1混血、4分の1混血の扱いで議論が白熱する一方で、“ユダヤ人かどうかなんて確認してられない” って現場の本音が飛び出しちゃう。
なんだかブラックコメディにも思えてくるけど、終盤に “最終解決” の具体的方法の話になって、改めて凄まじい史実を思い出させられる。
最年長の事務次官クリツィンガーが悲痛な表情を見せるとともに、観ているこちらは吐き気を催す。

きっと地球外生命体から見たら、人間と猿の区別も難しいはず。それなのに視野を広く、寛容でいられないのは、目の前に飢えや殺し合いがあるからか、独裁欲求いっぱいの人間がいるからなのか…
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