原題は“Die Wannseekonferenz”(ヴァンゼー会議)
第二次大戦中のホロコーストの具体的方法を決定づけた会議とされるナチス高官たちの約90分のヴァンゼー会議(議題:ユダヤ人問題の最終的解決)を再現したドラマ。
TVムービー(日本では劇場公開)ですが、まずドイツ製作というのが評価できます。
ヴァンゼーとは会議が行われたベルリンの屋敷近くにある湖の名。
会議のメンバーは、悪名高きナチス親衛隊中将ラインハルト・ハイドリヒを中心に親衛隊と政府の高官たち15名と記録係の女性1名(ヒトラーはいません)。
アウシュヴィッツの仕組みを本会議でお披露目するアドルフ・アイヒマンもいます。
屋敷の会議室にメンバーが集まり、終了後に解散するまでがリアルタイムに描かれ、ほぼ密室の会話劇という構成は『十二人の怒れる男』を思い出します。
ただし『十二人~』の陪審員8号のような正義のリーダーは不在で、会議はとんでもない方向へ。さしずめ"15人のイカレタ男"。
会議が始まる前は席順の不満だったり根回しだったりと一般企業でもありがちな光景。
そして現代の会議と同じく効率化や簡素化が議論されますが、大きく違うのはその対象がユダヤ人の"特別処理"(=大量虐殺)の方法だということ。
欧州全域の1,100万人のユダヤ人を特別処理すると聞いて困惑顔の官僚たちが心配するのは、倫理的な問題ではなく、どう効率よくこなすのかの問題。
銃殺では大量の銃弾がムダになるし、隔離しても宿泊施設や食料がムダ。
移送後そのままガス室に直行させればそれらが不要なので効率的。
1/2混血や1/4混血はどう扱うか、そもそも同じユダヤ人を区別する必要があるのか。
大量の死体の処理が手間、死んだら蒸発してくれればいいのに。
…などとみんな勝手なことを言います。
なんせユダヤ人抹殺はヒトラー総統閣下の意向ですから、最初から誰も反対できません。結局は全員がアイヒマンの用意周到な計画に納得。
しかもこの人たち、誰も自分たちが戦争に負けるなんて思っていません。
ラインハルト・ハイドリヒはこの5カ月後に暗殺されますが、大した歯止めにはならず、終戦までに約600万人のユダヤ人が犠牲となります。