このレビューはネタバレを含みます
どの視点から描くかで全く違う印象を持ちそう
原作の文体がどうしても好きになれず、映画ならと足を運んだ。
じわじわ〜っともやのような展開が暫く続く。
途中で帰る人もいた。
けれど大半の人が、この物語の中で作り手が何を伝えようとしているのか、目をこらして見ようとしているかのようだった。
個人的には水チーム主体の話展開よりも
八重子や検事あたりからの視点にした方が
課題はくっきりしたと思う。
男女の関係や、子どもに対する話だから共感もしやすい。
しかしあえてそこを水という無機物に対しての性癖、とりわけマジョリティには共感しづらい異質を主眼にすることで
それこそ水のように身近で、生命の源で、
けれどどこか恐ろしい掴みどころのないモノが
彼らと私たちを繋ぐ境界性のように存在するようだった。
水という無機物に対しての性癖は正直実害がないので好きにしたら良いのではと思っていたが、
後から考えるとそれ以外に性欲を覚えないことが生きづらく辛いのだと感じたし、
「生きてゆくために手を組もう」は常人の結婚の動機のそれと何ら変わらないし、
緩やかに観客も共感フェーズに入っていった。
特に八重子の心からのシーンはとても良かったと思う。
演じた東野さんも、「あそこまで役に入り込めたことは今までなかった」とインタビューで答えていた。
理解したい、なんで理解する側前提なんだよ、それでも理解したい。
大切だから。
あのシーンはとても美しかったと思う。
全体的にテンポは良い方ではなく、
前半はうーんと頭を捻ることもあったが
最後には自身の中にこぽりと、
新たな形容し難い気持ちが湧く
そんな不思議な映画だった。
