普通の人とは違う嗜好を持っていることによって疎外感をおぼえる苦しみを描いた作品。テーマとしては交通事故に快感をおぼえる人を扱ったクローネンバーグの『クラッシュ』を想起するものの、「苦悩そのものではなく、それによる社会からの眼差し」の恐怖にスポットライトが当てられているところに朝井リョウらしい独自性がある。普通に正しく生きる人とは関係のない世界で生きようとしても、どうしても羨望を向けてしまったり、普通の人だと認識されて思わず安堵したりといった、人とは違う自分に自分ひとりさえ味方してやれない弱さが人間らしい自信のなさを現していると感じた。
