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アシスタントのNのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
4.5
映画業界のアシスタントとして駆け出しの女性の就労風景を描いた作品。プロデューサーを目指す彼女が携わる仕事は華やかではない雑用で、終始不服そうな表情を浮かべている。駆け出しである以上、最初から企画とかクリエイティブな仕事ができるわけではないことは想像できるはずだが、実際に従事してみると、自分の仕事が誰にでも替えが効くようなことばかりで自己効力感が満たされないのもわかる。
なにより、理想の業界に入ってみれば、なかではセクハラやパワハラと言われてもおかしくないような光景が垣間見えるし、業界全体はもっといろいろあるのだろうなと想像がつくし、そこには当然疑問を感じる。
そのなかで彼女は自分の倫理観を保ち、いわば告発をしてしまう。してしまうと表現したのは、この告発が彼女にとっても何の意味をもたらさない愚策だったことが後に明らかになるからだ。人事なのか産業医なのかわからないけど、本来誰にも口外されないはずの相談が会社の偉い人に筒抜けみたいなのは小さい会社なり人間関係がウェットな会社ならありがちだろう。
会社が用意した優しさみたいな仕組みを素直に受けとって信頼しているうちは、まだ会社に染まっていない。会社からの裏切りや諦めが積み重なって信頼しなくなってから、人や会社を「利用する」ようになるだろう。プロデューサーってそういう仕事でしょうし。最後の台詞は、「社会は誰かを利用して世渡りしていくものよー」ということなんだろう。本当くだらねえなって思いながらも、どこかで感覚が麻痺して、なんとかなるんだろう。
しかし、この映画で中心的に描かれていた「新人(主人公)の目線」は内部に染まっていないがゆえに内部のおかしさや不条理を観客に対して暴き出すから、自分がこれから生きていくとき新人の感覚を忘れていくとしても時々思い出す瞬間も必要だよな。あっ、自分ってこんなに腐ってたんだってね。
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