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aftersun/アフターサンのNのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.9
離婚をした父と娘がひと夏を過ごした記憶を、記録と想像を織り交ぜながら描いた作品。人の内側にうごめくメランコリックなものを明瞭な輪郭で掴まるのではなく、そっと滲ませて浮かすような映像表現に息を呑む。テーブルやブラウン管に薄ら反射する人物、唐突に挟まれる父の不穏な行動、ソフィの視点からみた大人の危うさなど、人の気配の不確かさというか脆さのようなものが感覚的に描写されていて、観ているこちらまでその空気のなかに吸い込まれるような没入感があった。音楽は感情表現の増幅や状況の説明に使われるのではなく、その時間に流れるものして添えられているような使い方で心地よく馴染む。記憶を回想する話だが、この作品自体が自分の思い出として刻まれる夢想的な読後感があり、一度ならずまた観返すことになるだろうと思った。
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