MotelCalifornia

正欲のMotelCaliforniaのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.5
『正欲』
とてつもない映画だった。
今年ベストかも…。
原作未読だけど、すぐに読んでみたくなった。

冒頭、ガッキーにこんなことさせんなよ!
とかってツッコミながら観てたけど、段々、そんなことも忘れてグイグイ引き込まれた。
※部屋が水で満たされる演出を「濡れている」ことの映像的隠喩表現なのかと思ってたら(それもフレッシュで面白い!って思ったけど)まさか、ダイレクトな主観描写だったとは…。おもしれー!

誰しもが自分の性癖について、大きな声では人には言えないものだろう。
それが社会的に受け入れられやすいものなのか、そうでないか、程度の差こそあれ。
主要人物2人の性的指向は、とても「変わった」ものだけど、これはメタファーであって、鑑賞者が自分の指向に置き換えて自分ごととして考えられるように、あえて「ありえない」ものを作者はチョイスしたんじゃないかな…?
今年はハッキリとタブーな性癖(?)カニバリズムで繋がった人々を描いたルカ・グァダニーノの『ボーンズ・アンド・オール』もあったけど、人には迷惑をかけないけど、わかってもらえないという意味では同じくらいの辛い本作の二人。

しかしまあ、よくこんな話を書いたなあ…。
朝井リョウには聞きたいことが百個くらいある。

芝居も演出も編集も、どれも素晴らしかったけど、『窓辺にて』に続いて、稲垣吾郎がすごくいい。どっちもめちゃくちゃ「吾郎ちゃん」だが、両者は180度違うタイプの人…笑。
ガッキーも言葉少ななキャラだったが、一言一言の重みがすごかった。
マジョリティ側に立ち、「普通」代表としてマイノリティのことを人間のバグとして、ありえない存在として見下ろす稲垣吾郎演じる寺井を、最後の最後に「普通」の言葉で刺し返すガッキー演じる夏月の一言の鋭さよ…。

寺島の部下の坊主の越川を演じていた俳優さん、微妙な顔の演技が人間味があってとても良かった。


全ての人間は観たら、ハッとするはず。
傑作。
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